歯周病の実態
歯科の 2 大疾患とされる歯周病および虫歯は、その発症や進行により歯なくなると、口腔機能障害を引き起こし、歯やお口の健康のみならず、全身の健康にも悪影響を及ぼすと言われています。また、歯やお口の健康を保つことは,単に食べ物を摂ったり・噛んだりするだけでなく,食事や会話を楽しむなど生涯豊かな生活を送るための土台となっています。
また、歯の喪失が 10 歯以下であれば食生活に大きな支障が生じないことから、日本では、生涯を通じて自分の歯で好きなものをおいしく食べ、生き生きとした会話や笑顔をもち続けるために、80 歳になっても 20 歯以上の自分の歯を保とうとする「8020 運動」 が提唱・推進されています。
現在、国民の口腔衛生に対する意識の向上と歯科医療従事者(歯科医師,歯科衛生士など)の努力の結果、平成 17 年度には 80 歳で 20 歯以上の歯を有する者の割合は初めて 20%を超え、平成 23 年 度では 38.3%、平成 28 年では 51.2%となり平均歯数は約 15.3 歯となりました。しかし、一方で歯周病になっている患者の割合は増加しています。
日本の歯周病の有病率は他の疾患に類をみないほど高く、 社会および国民に与える影響はきわめて大であり、歯周病の治療および予防への取り組みは今後の重要な課題となっています。
歯周病の罹患状態
「平成 28 年歯科疾患実態調査」によると,歯周病になっている患者さんの割合は年齢が高くなるにつれて増加し、45 ~ 49 歳の年齢階級層で約 50%、65 ~ 74 歳では約 57%となっています。とくに残っている歯が多くなっているため歯周病患者さんの増加が著しくなっています。 また,歯肉出血を有する者の割合(歯周病予備軍)は 15 ~ 29 歳では 30%を超え、30 歳を過ぎると40%を超えます。そのため若年期から歯周病に対する予防、あるいは重症化予防を行うことが今後さらに求められています。
歯科の受診状況
自治体で行われている歯周疾患の検診受診率は「地域保健・健康増進事業報告」と住民基本台帳人口を用いて調べた報告によると、平成 27 年で 4.3%になっているため、検診受診率のさらなる増加が望まれます。また、「平成 28 年歯科疾患実態調査」によると「歯肉炎および歯周炎」の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者さんの数)は、398 万 3,000 人であり、平成 23 年の調査より 66 万人以上増加しています。「平成 28 年歯科疾患実態調査」を元に、歯周病患者数を推定すると約 7,000 万人となっています。しかし,実際に歯科診療所で治療を受けている患者は、約 400 万人となっていて、総患者数 からするとまだまだ少ないことがわかります。この数字の差から「歯周病であることに気づかないでいる人」や「気づいていても治療をしないでいる人」がいかに多いかがわかるでしょう。そのため、今後さらなる検診率,受診率の改善を行なっていかなければなりません。