歯周病と全身の病気との関連

歯周病と全身疾患について

 歯周病に対する研究は現在のところ止まることはありません。その中で全身疾患と歯周病の関係が明らかになってきました。それらはペリオドンタルメディスンと言われいています。

 そしてアメリカで”Floss or Die!?(フロスか死か!?)”と言った言葉がメディアの見出しを飾り、歯科界・医科界・一般の方に注目されるようになりました。

”Die or Floss!?”という言葉を使い歯周病と全身疾患に対し警鐘を鳴らしている

 歯周病と全身疾患を関連させるものは、炎症の存在です。その結果、歯周病が全身的な疾患に悪影響を及ぼしたり、その逆に全身性の慢性炎症性疾患が歯周病を増悪させる科学的エビデンスが多く発表され、歯周病と全身疾患との関連性は確かなものとして認識されています。そして、この関係は世界的にみても注目を集めています。その関連性を科学的に調査するためにヨーロッパ歯周病学会(EFP)とアメリカ歯周病学会(AAP)は、それまでに存在するメカニズムの研究や人を対象とした研究を調査し、両国際学会合同のコンセンサスを発表しました。

 さらに日本においても2016年3月に『歯周病と全身の健康』が発刊され、日本歯周病学会もコンセンサスを発表し、改めて歯周病と全身疾患の関連性をクローズアップされています。

 歯周炎は局所的な性質な疾患にもかかわらず、歯周ポケット内の感染が2つの経路で、全身疾患を引き起こすことが明らかになってきました。

 1:細菌感染の波及

 2:炎症や炎症が起こることよって出される物質が全身炎症に影響をもたらす

 3:1と2の組み合わせ

 健康な時は歯茎はバリアーとして機能し、細菌感染を防ぎます。しかし、歯周病は歯茎はブヨブヨになり細菌の入り口になってしまいます。

以下は歯周病と関連すると言われている全身疾患になります

 ・糖尿病

 ・心血管疾患・アテローム生動脈硬化

 ・肥満とメタボリックシンドローム

 ・関節リウマチ

 ・肺炎・慢性閉塞性肺疾患(COPD)

 ・慢性腎症

 ・認知症

 ・がん

歯周病と糖尿病

 糖尿病とは

  国際糖尿病連合(International Diabetes Federation)によると2015~2040年の間で、20~79歳の世界人口の糖尿病の有病率は8.8%~10.4%に増加し、患者数は4億1500万人から6億4200万人に増加し、10人に1人が糖尿病患者になると予測されています。日本でも、厚生労働省の2012年の国民健康・栄養調査によると1997~2012年にかけて「糖尿病が強く疑われるもの」は690万人から950万人に増加しています。また、糖尿病患者の1/2の患者が糖尿病の診断を受けていないという考えられており、糖尿病の診断を受けていない糖尿病患者、前糖尿病患者を早期かつ効果的に見つけていかなければなりません。

糖尿病と歯周病の関連性

 糖尿病と歯周病は密接に関連すると言われています。つまり、歯周病になると糖尿病になりやすく、またその逆で糖尿病になると歯周病を悪化させると言われています。

 そもそも糖尿病とはインスリンというホルモンの分泌量の低下やインスリン感受性の低下やインスリン不足によって引き起こされると言われています。インスリンというホルモンは、血中に流れているグルコース(血糖)を細胞内に取り込み、それをエネルギーとして活用・消費するためのものです。

 なぜ糖尿病と歯周病が関連するかというと、まず歯周病に罹患すると歯茎に炎症が引き起こされます。そしてその炎症によって出される物質(炎症性サイトカイン・炎症伝達物質)は血管に移行しそれらの血中濃度が有意に上昇します。すると炎症性サイトカイン・炎症伝達物質がインスリンに対する感受性をさげ、血液中のグルコースを細胞内に取り込むことができず、血液内のグルコース(血糖)濃度が上がります。炎症状態が持続するとインスリンを賛成する細胞の機能を奪いさらに糖尿病を悪化させると言われています。

 逆のことは次のように説明されています。血液の炎症状態が続くと、血液中の酸化ストレスが増加し、悪玉コレステロールが酸化悪玉コレステロールへと変化し、さらに炎症を悪化させます。その結果、歯周炎も悪化してしまいす。これが糖尿病と歯周病が関連しているという理由です。