【歯を失うと、人生の質が下がる?】

──35本の研究が示した、衝撃の事実とは?

こんにちは。
歯周病専門医の安西です。

「歯が1本抜けたくらい、大丈夫だろう」
そんなふうに思っていませんか?

実は、世界中の研究を分析した結果──
歯を失うことで、私たちの生活の質(QOL)が大きく下がることがわかっています。

今回は、35本の信頼できる研究をまとめた“システマティックレビュー”という分析から、「歯の本数と生活の質の関係」をわかりやすく解説します。


■ 歯が少ない人は、QOLが3倍悪化していた

この研究では、10,000人以上のデータを統合し、以下のような結果が出ています。

  • 歯が25本以上ある人に比べて、
    10本以下しか残っていない人は、
    ➤ QOLが約3倍も悪化していた(※OHIPスコアによる)
  • 特に、前歯を失った人は、見た目や会話に支障が出やすく、心理的ダメージが大きいという傾向がありました。
  • さらに、奥歯の噛み合わせが足りない人も、「食事が楽しめない」「口元が気になる」といった影響を強く受けていたのです。

■ “何本あるか”よりも、“どこが残っているか”が重要

この研究では、「歯の本数」だけでなく、「残っている歯の位置」にも注目しています。

結果は明らかでした。

  • 前歯が抜けた人のほうが、生活の質の低下が深刻
    ➤ 笑顔・会話・見た目の印象に大きな影響
  • 奥歯の噛み合わせが少ない人は、食事を避ける傾向があった
    ➤ 外食・人前での食事・会話の自信喪失にもつながる

つまり──
「何本残っているか」よりも「どこが残っているか」が、QOLに大きく関わっているということがわかったのです。


■ 歯を1本失うたびに、人生の楽しみが減っていく?

たとえばこんな変化、心あたりありませんか?

  • 「噛みにくいから柔らかいものばかり食べるようになった」
  • 「人と話すときに、歯を見られたくない」
  • 「笑顔に自信が持てなくなった」

これは、単なる“歯の問題”ではありません。
“人生の質”の問題です。

今回の研究では──
「歯が20本を下回ると、QOLが急激に低下する」
という明確な境界線が見つかりました。


■ 歯を守ることは、人生を守ること

今回紹介した研究の結論は、こうまとめられています。

「歯の本数、位置、噛み合わせが、人生の満足度に強く影響する」
しかもその影響は、国や文化に関係なく一貫していた。

つまり──
歯を失わないようにすることは、“人生の質”を守るための最もシンプルな健康投資だと言えるのです。


■ 最後に:今からでも遅くありません

もし、すでに歯を失ってしまっている場合でも──
「噛める環境」「見た目を整える環境」を整えることで、QOLの回復は可能です。

だからこそ私たちは、

  • 歯を失わないための予防(歯周治療)
  • 失った歯を補うための再建(インプラントや補綴)
    この両方に力を入れています。

あなたの毎日が、
もっと楽に、もっと楽しくなるように──

「歯の健康から始まる、人生の再設計」
一緒に取り組んでみませんか?


🔎 参考文献

Gerritsen AE, Allen PF, et al. (2010). Tooth loss and oral health-related quality of life: a systematic review and meta-analysis. Health and Quality of Life Outcomes, 8:126.
https://hqlo.biomedcentral.com/articles/10.1186/1477-7525-8-126